学生が社会に出る目的を持てる機会を作りたい

後藤 峻

株式会社ソーワダイレクト 取締役

ソーワダイレクトは石巻グランドホテル、石巻サンプラザホテル、アンジュガーデン迎賓館の運営を行っている会社です。私は震災後に石巻へUターンで戻り、現在は営業から広報まで幅広く業務を担当をしています。

現在の雇用状況(2019年10月時点)は正社員約50名、パートやアルバイトも含めると約80名程度です。正社員の割合は新卒と中途採用が半々という状況です。

雇用面で抱えている課題は2点あり、1つはアッパークラス、 50歳以降の世代が離職するケースです。時代や会社の変化、体力的な側面などが理由で、この世代の層が薄くなっています。そしてもう1点は高校新卒で入社した社員が3年と経たずに辞めてしまうケースです。「サービスの仕事は誰でもできる」と目的意識が薄いまま、「ホテルのサービス」に気づく前に辞めてしまいます。またサービス業ならではのシフト制という点も、土日が定休日の他の業種に目が映ってしまう傾向もあります。

このような状況のため、スタッフの不足は否めません。特に若い世代が少ないことは問題で、会社とお客様を長く見てきたからこそ辿り着けるサービスを提供できる人財が、将来的に不足する事が予想されます。ですから入社から3～4年が経過した社員には特にチャレンジや自己成長の機会を増やせるよう取り組んでいます。若い世代に頑張ってもらいたいという気持ちが強いので、ビジネススキルのレクチャーやグローバルな視点で同業他社の動向を紹介する「資質向上講座」、若手料理人による商品企画イベントなどを実施しています。

新卒の若い世代をどんどん採用したい。採用したいのですが、社会に出て働く目的意識、そのような意識が高い高校生ほど石巻から出てしまう現状では、正直求める人材を確保することは厳しいという感覚があります。現状では40歳未満の中途で採用したスタッフに長く勤めてもらうケースの方が現実的な状況です。

石巻人事部の話は斉藤さんから直接計画を聞きました。私も特に若い世代が働く目的意識を持つことができていない点は問題だと考えていましたので、斉藤さんがこれまで取り組んでいた高校生へのアプローチは興味深く見ていました。私も高校生と地元企業が接点を持つミライブラリーの取り組みに参加し、会社以外の若い世代の考えを知ることができたのもよい機会でした。また、そこでつながった企業関係者とのつながりも大きいと感じています。

石巻人事部に期待する点としてもミライブラリーのような学生のうちから働く意識・目的を持てる企画を作りたいと思っています。働く意識・目的を持つと言うのは、言い換えれば自己実現への過程を描く事に繋がります。また入社して少し経過した社員に、入社当時のフレッシュな気持ちを呼び戻す機会も作りたいです。自社だけでは難しい課題も、他社と繋がることでうまく解決への道筋が描けるような方法を見つける企画もあるといいですね。また企画の裏側で、それぞれの企業の若手とともに懇親を深めるというのもよい場ですね。そうした場で仲良くなった社外の仲間と悩みを共有し、切磋琢磨できる機会にしてもらえると嬉しく思います。

地元で就職し、地元で子どもを産みたいと考えている地元の高校生へ、私たちが伝えられることを伝える機会も非常に大事だと思います。この町で働き生きる若者が、悩みながらも自分らしく働けるように石巻人事部を上手に使って欲しいなと思います。

◆後藤 峻 / プロフィール

宮城県石巻市出身、東京工芸大学大学院工学研究科修了。設計事務所で設計を担当後、転職し飲食店でのサービスを経て、震災を機に石巻へUターン。家業であるソーワダイレクトへ。現在は取締役として社内の中核を担う。

◆企業情報

企業名：株式会社ソーワダイレクト
郵便　：986-0827
住所　：宮城県石巻市千石町2-10
電話　：0225-93-8111
WEB　 ：http://www.grandhotel.bz/